更新履歴
2009/8/19: この記事の内容を修正して「ゲームデザインの理論」のドキュメントに「プレイヤーの不満とゲームデザインの構造」として追加しました。今後は、こちらのドキュメントを更新していきます。
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この記事では、以下を主張する。
ゲームデザインに対するプレイヤーの不満は、以下の場合に発生する。
(1) 個々のデシジョンから発生する場合
(2) デシジョン間の関係から発生する場合
このことは、以下を意味する。
ゲームデザインのプロセスにおいては、個々のデシジョンを行うだけでなく、デシジョン間の関係付け、つまり、ゲームデザインの構造化が必要となる
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定(デシジョン)を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: 「キャラクターのレベルは上がる」、「レベル制限は99」、「戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う」、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: 「ある敵のHPは500」といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: 「セーブ数は、10件」など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: 「LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができる」など。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたこと(デシジョン)の集合であるとする。
詳細は「ゲームデザインの理論」のドキュメントを参照。
ndsmk2さんのレビューを分析していると、シミュレーションRPGである『デビルサバイバー』には、次の不満があることが分かった。
セーブデータは一つ
この不満を挙げたレビューを詳しく調査してみると、不満となる理由は、いくつかあることが分かった。以下の図は、不満の理由を表している。
以下では、この図をもとに、考察する。その前に、この記事の定義によれば「セーブデータは一つ」というのは、「決めたこと(デシジョン)の一つ」であり、「ゲームデザインの一部」であるということに注意してほしい。
これら図からは、以下の考察ができる。
(1) ある一つのデシジョンから発生する不満: 「家族で共有できない」や「友達に貸せない」などは、「セーブデータは一つ」というデシジョンが存在すれば、直接的に発生する不満である。たとえば、以下の図に示すように、NDSのRPGである『ドラゴンクエスト9』(以下ドラクエ9)でも、「セーブデータは一つ」というデシジョンが行われた結果として 「家族で共有できない」や「友達に貸せない」といった不満が発生している。
(2) デシジョン間の関係から発生する不満: 「他のエンディングを見にくい」は、「セーブデータは一つ」というデシジョンだけでは発生しない不満である。つまり「マルチエンディングである」というデシジョンが存在しなければ発生しない不満である。
(2)の観点から見れば、最初の図は不適切であると言える。「マルチエンディングである」というデシジョンが図の要素として表されていないためである。以下の図に、改良前(図の上)と改良後(図の下)を示す。
改良後の図は、大きく二つの部分から構成されるとして表している。
・ある一つのデシジョンとそのデシジョンから発生する不満(図の右下):「セーブデータは一つ」というデシジョンとこのデシジョンから発生する不満
・デシジョン間の関係とその関係から発生する不満(図の左上):「セーブデータは一つ」と「マルチエンディングである」というデシジョンと、これらのデシジョンの関係から発生する不満
別の観点から言えば、この改良後の図は、これら二つの部分の合成の結果であるとも見なせる。
次に、二つ目の構成部分である「デシジョン間の関係とその関係から発生する不満」の図について少し考察する。いくつかの疑問があるかもしれないためである。一つ目は、
「セーブデータは一つ」に対する不満要素(「他のエンディングを見にくい」)関係付け(案1)であり、 「マルチエンディングである」と「セーブデータは一つ」という関係に対するの関係付け(案2)でないのは何故か?
理由は、以下のような不満の表現はあっても
マルチエンディングなのにセーブデータは一つ
以下のような不満の表現はなかったためである。
セーブデータは一つなのにマルチエンディング
つまり、誤ったデシジョンなのは「セーブデータは一つ」であって「マルチエンディングである」ではないということである。この関係を表すために、案1を採用した。
二つ目の疑問には、
「マルチエンディングである」と「セーブデータは一つ」の間の関係に方向性があるのはなぜか。
以下の図は考えられる選択肢を表している。
案3を採用しなかったのは、「マルチエンディングである」と「セーブデータは一つ」とが同等の関係にあるように感じさせるためである。
案1か案2のどちらが適切なのかを判断は難しい。案1は、「マルチエンディングである」は、「セーブデータは一つ」ということに依存しているという関係を、案2は、「セーブデータは一つ」ということは「マルチエンディングである」に影響を与えているという関係と見なせるかもしれない。
ここまでをまとめる。
ゲームデザインに対するプレイヤーの不満は、以下の場合に発生する。
(1) 個々のデシジョンから発生する場合
(2) デシジョン間の関係から発生する場合
ゲームデザインの目標の一つは、プレイヤーの不満をできる限り少なくすることであると考えられる。前節の考察に基づけは、不満の解消には、二つの場合がある。
(1) 個々のデシジョンから発生する不満の解消
(2) デシジョン間の関係から発生する不満の解消
このことからは、
ゲームデザインのプロセスにおいては、個々のデシジョンを行うだけでなく、デシジョン間の関係付け、つまり、ゲームデザインの構造化が必要となる
と言える。
以下の図は、「マルチエンディングである」と「セーブデータは一つ」というデシジョンが行われた後のステップを表している。
この記事では、以下を主張した。
ゲームデザインに対するプレイヤーの不満は、以下の場合に発生する。
(1) 個々のデシジョンから発生する場合
(2) デシジョン間の関係から発生する場合
このことは、以下を意味する。
ゲームデザインのプロセスにおいては、個々のデシジョンを行うだけでなく、デシジョン間の関係付け、つまり、ゲームデザインの構造化が必要となる
2009/8/19: この記事の内容を修正して「ゲームデザインの理論」のドキュメントに「プレイヤーの不満とゲームデザインの構造」として追加しました。今後は、こちらのドキュメントを更新していきます。
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この記事では、以下を主張する。
ゲームデザインに対するプレイヤーの不満は、以下の場合に発生する。
(1) 個々のデシジョンから発生する場合
(2) デシジョン間の関係から発生する場合
このことは、以下を意味する。
ゲームデザインのプロセスにおいては、個々のデシジョンを行うだけでなく、デシジョン間の関係付け、つまり、ゲームデザインの構造化が必要となる
ゲームデザインとは何か?
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定(デシジョン)を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: 「キャラクターのレベルは上がる」、「レベル制限は99」、「戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う」、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: 「ある敵のHPは500」といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: 「セーブ数は、10件」など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: 「LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができる」など。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたこと(デシジョン)の集合であるとする。
詳細は「ゲームデザインの理論」のドキュメントを参照。
プレイヤーの不満とゲームデザイン
ndsmk2さんのレビューを分析していると、シミュレーションRPGである『デビルサバイバー』には、次の不満があることが分かった。
セーブデータは一つ
この不満を挙げたレビューを詳しく調査してみると、不満となる理由は、いくつかあることが分かった。以下の図は、不満の理由を表している。
以下では、この図をもとに、考察する。その前に、この記事の定義によれば「セーブデータは一つ」というのは、「決めたこと(デシジョン)の一つ」であり、「ゲームデザインの一部」であるということに注意してほしい。
これら図からは、以下の考察ができる。
(1) ある一つのデシジョンから発生する不満: 「家族で共有できない」や「友達に貸せない」などは、「セーブデータは一つ」というデシジョンが存在すれば、直接的に発生する不満である。たとえば、以下の図に示すように、NDSのRPGである『ドラゴンクエスト9』(以下ドラクエ9)でも、「セーブデータは一つ」というデシジョンが行われた結果として 「家族で共有できない」や「友達に貸せない」といった不満が発生している。
(2) デシジョン間の関係から発生する不満: 「他のエンディングを見にくい」は、「セーブデータは一つ」というデシジョンだけでは発生しない不満である。つまり「マルチエンディングである」というデシジョンが存在しなければ発生しない不満である。
(2)の観点から見れば、最初の図は不適切であると言える。「マルチエンディングである」というデシジョンが図の要素として表されていないためである。以下の図に、改良前(図の上)と改良後(図の下)を示す。
改良後の図は、大きく二つの部分から構成されるとして表している。
・ある一つのデシジョンとそのデシジョンから発生する不満(図の右下):「セーブデータは一つ」というデシジョンとこのデシジョンから発生する不満
・デシジョン間の関係とその関係から発生する不満(図の左上):「セーブデータは一つ」と「マルチエンディングである」というデシジョンと、これらのデシジョンの関係から発生する不満
別の観点から言えば、この改良後の図は、これら二つの部分の合成の結果であるとも見なせる。
次に、二つ目の構成部分である「デシジョン間の関係とその関係から発生する不満」の図について少し考察する。いくつかの疑問があるかもしれないためである。一つ目は、
「セーブデータは一つ」に対する不満要素(「他のエンディングを見にくい」)関係付け(案1)であり、 「マルチエンディングである」と「セーブデータは一つ」という関係に対するの関係付け(案2)でないのは何故か?
理由は、以下のような不満の表現はあっても
マルチエンディングなのにセーブデータは一つ
以下のような不満の表現はなかったためである。
セーブデータは一つなのにマルチエンディング
つまり、誤ったデシジョンなのは「セーブデータは一つ」であって「マルチエンディングである」ではないということである。この関係を表すために、案1を採用した。
二つ目の疑問には、
「マルチエンディングである」と「セーブデータは一つ」の間の関係に方向性があるのはなぜか。
以下の図は考えられる選択肢を表している。
案3を採用しなかったのは、「マルチエンディングである」と「セーブデータは一つ」とが同等の関係にあるように感じさせるためである。
案1か案2のどちらが適切なのかを判断は難しい。案1は、「マルチエンディングである」は、「セーブデータは一つ」ということに依存しているという関係を、案2は、「セーブデータは一つ」ということは「マルチエンディングである」に影響を与えているという関係と見なせるかもしれない。
ここまでをまとめる。
ゲームデザインに対するプレイヤーの不満は、以下の場合に発生する。
(1) 個々のデシジョンから発生する場合
(2) デシジョン間の関係から発生する場合
構造化のプロセスとしてのゲームデザイン
ゲームデザインの目標の一つは、プレイヤーの不満をできる限り少なくすることであると考えられる。前節の考察に基づけは、不満の解消には、二つの場合がある。
(1) 個々のデシジョンから発生する不満の解消
(2) デシジョン間の関係から発生する不満の解消
このことからは、
ゲームデザインのプロセスにおいては、個々のデシジョンを行うだけでなく、デシジョン間の関係付け、つまり、ゲームデザインの構造化が必要となる
と言える。
以下の図は、「マルチエンディングである」と「セーブデータは一つ」というデシジョンが行われた後のステップを表している。
まとめ
この記事では、以下を主張した。
ゲームデザインに対するプレイヤーの不満は、以下の場合に発生する。
(1) 個々のデシジョンから発生する場合
(2) デシジョン間の関係から発生する場合
このことは、以下を意味する。
ゲームデザインのプロセスにおいては、個々のデシジョンを行うだけでなく、デシジョン間の関係付け、つまり、ゲームデザインの構造化が必要となる
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