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2009/7/24: この記事の内容を修正して「ゲームデザインの理論」のドキュメントに追加しました。今後は、こちらのドキュメントを更新していきます。
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この記事では、以下を主張する。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
このプレイヤーが自分に適したゲームデザインを探索するという見方は、 ゲームのデザインプロセスに以下の結果をもたらす。
あるプレイヤーに適したゲームは、段階的にデザインできる。
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定(デシジョン)を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: キャラクターのレベルは上がる。レベル制限は99。戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: ある敵のHPは500といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: セーブ数は、10件など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができるなど。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたこと(デシジョン)の集合であるとする。
詳細は「ゲームデザインの理論」のドキュメントを参照。
一年以上前から、ゲームレビューサイトに投稿されたレビューを読み、プレイヤーがどんな不満を持っているのかを分析している。発見の一つは、以下である。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて、不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
ここで不満とは、以下であるとする。
プレイヤーの不満とは、 プレイヤーが実際にプレイして感じたこととプレイヤーが期待することとの間の不一致である。
不満の表現は、抽象的なものから具体的なものまで様々である。たとえば、NDSのRPGである『セブンスドラゴン』のレビューでは、次のような不満の表現があった。
・抽象的な不満の表現: はっきりとは言えないが、なぜかストレスが溜まっていく(メニュー画面とかの操作性が原因?)
・具体的な不満の表現: キーアイテムは処分不可能でありアイテム欄を圧迫するのに、預り所がない。
実際にプレイして感じたこととは、そのプレイヤーにとってのそのゲームの質あるいは機能的な事実である。質とは、たとえば、「ストレスがたまる」に対応する。機能的な事実とは、たとえば、「預り所がない」に対応する。
プレイヤーが期待することとは、実際にプレイして感じたこととの中で、プレイヤーが受け入れたくないことを解消する質や機能のことである。たとえば、「ストレスがたまらない」や「預り所がある」などである。
この節では、具体的な不満の表現が行われるプロセスには、
プレイヤーが自身に適したゲームデザインを探索するプロセス
が含まれることを議論する。
具体的な不満の表現として、たとえば、『セブンスドラゴン』のレビューでは、次のようなものがあった。
(1) ダッシュは、序盤のクエストをクリアすることの報酬としてできるようになるが、最初からダッシュできたほうがいい。
(2) 受注したクエストの確認がメニュー画面でできない。
(3) フロワロは踏むとダメージを受ける仕様(毒沼)だが、毒沼だけでなく幾つか種類を増やしてもよかった。たとえば、雑魚敵が強くなるなど。
これら不満の表現は、以下の二つの要素が明示的・暗黙的に含まれると考えられる(上記の表)。
・プレイヤー自身に適さない実際のゲームデザイン
・プレイヤー自身に適したゲームデザイン
ここで注目したいのは、これら二つの要素間の関係である。この記事では、
プレイヤー自身に適さない実際のゲームデザインからプレイヤー自身に適したゲームデザインへの探索
として見なせると考える。
以下の図は、探索のプロセスは「プレイヤーによる決定の拒否」と「プレイヤーによる決定」により行われることを示している。
「探索」と呼ぶのは、迷路を探索することに似ている部分があるためである。たとえば、分かれ道がAとBの二つあり、Aを選択した(デザイナーによる決定に対応)とする。Aの道を進んでいくと、行き止まりである。そこでこの道を引き返す(プレイヤーによる決定の拒否)。次にBを選択する(プレイヤーによる決定)。
この記事では、以下を主張した。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
プレイヤーが自分に適したゲームデザインを探索するという見方は、 ゲームのデザインプロセスに以下の結果をもたらす。
あるプレイヤーに適したゲームは、段階的にデザインできる。
ただし、次の課題がある。
(a) プレイヤー自身の探索の失敗: プレイヤーが想像したデザインは、実際にはプレイヤーに適し ていないかもしれない。ゲームデザインは、実際にゲームとして実現されプレイされるまで適切な評価ができない可能性がある。そのため、プレイヤーが自分が 探索したデザイン評価できるように、デザインを素早くゲームとして実現できる必要がある。
(b) プレイヤー間の好みの衝突: プレイヤーAに適したデザインは、プレイヤーBには適していないかもしれない。そのため、好みの衝突を解消するようなゲームデザインを行う必要がある。
2009/7/24: この記事の内容を修正して「ゲームデザインの理論」のドキュメントに追加しました。今後は、こちらのドキュメントを更新していきます。
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この記事では、以下を主張する。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
このプレイヤーが自分に適したゲームデザインを探索するという見方は、 ゲームのデザインプロセスに以下の結果をもたらす。
あるプレイヤーに適したゲームは、段階的にデザインできる。
ゲームデザインとは何か?
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定(デシジョン)を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: キャラクターのレベルは上がる。レベル制限は99。戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: ある敵のHPは500といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: セーブ数は、10件など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができるなど。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたこと(デシジョン)の集合であるとする。
詳細は「ゲームデザインの理論」のドキュメントを参照。
ゲームプレイヤーのゲームデザインに対する不満
一年以上前から、ゲームレビューサイトに投稿されたレビューを読み、プレイヤーがどんな不満を持っているのかを分析している。発見の一つは、以下である。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて、不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
ここで不満とは、以下であるとする。
プレイヤーの不満とは、 プレイヤーが実際にプレイして感じたこととプレイヤーが期待することとの間の不一致である。
不満の表現は、抽象的なものから具体的なものまで様々である。たとえば、NDSのRPGである『セブンスドラゴン』のレビューでは、次のような不満の表現があった。
・抽象的な不満の表現: はっきりとは言えないが、なぜかストレスが溜まっていく(メニュー画面とかの操作性が原因?)
・具体的な不満の表現: キーアイテムは処分不可能でありアイテム欄を圧迫するのに、預り所がない。
実際にプレイして感じたこととは、そのプレイヤーにとってのそのゲームの質あるいは機能的な事実である。質とは、たとえば、「ストレスがたまる」に対応する。機能的な事実とは、たとえば、「預り所がない」に対応する。
プレイヤーが期待することとは、実際にプレイして感じたこととの中で、プレイヤーが受け入れたくないことを解消する質や機能のことである。たとえば、「ストレスがたまらない」や「預り所がある」などである。
ゲームプレイヤーのゲームデザインの探索
この節では、具体的な不満の表現が行われるプロセスには、
プレイヤーが自身に適したゲームデザインを探索するプロセス
が含まれることを議論する。
具体的な不満の表現として、たとえば、『セブンスドラゴン』のレビューでは、次のようなものがあった。
(1) ダッシュは、序盤のクエストをクリアすることの報酬としてできるようになるが、最初からダッシュできたほうがいい。
(2) 受注したクエストの確認がメニュー画面でできない。
(3) フロワロは踏むとダメージを受ける仕様(毒沼)だが、毒沼だけでなく幾つか種類を増やしてもよかった。たとえば、雑魚敵が強くなるなど。
これら不満の表現は、以下の二つの要素が明示的・暗黙的に含まれると考えられる(上記の表)。
・プレイヤー自身に適さない実際のゲームデザイン
・プレイヤー自身に適したゲームデザイン
ここで注目したいのは、これら二つの要素間の関係である。この記事では、
プレイヤー自身に適さない実際のゲームデザインからプレイヤー自身に適したゲームデザインへの探索
として見なせると考える。
以下の図は、探索のプロセスは「プレイヤーによる決定の拒否」と「プレイヤーによる決定」により行われることを示している。
「探索」と呼ぶのは、迷路を探索することに似ている部分があるためである。たとえば、分かれ道がAとBの二つあり、Aを選択した(デザイナーによる決定に対応)とする。Aの道を進んでいくと、行き止まりである。そこでこの道を引き返す(プレイヤーによる決定の拒否)。次にBを選択する(プレイヤーによる決定)。
まとめ:段階的なゲームデザインのプロセスと課題
この記事では、以下を主張した。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
プレイヤーが自分に適したゲームデザインを探索するという見方は、 ゲームのデザインプロセスに以下の結果をもたらす。
あるプレイヤーに適したゲームは、段階的にデザインできる。
ただし、次の課題がある。
(a) プレイヤー自身の探索の失敗: プレイヤーが想像したデザインは、実際にはプレイヤーに適し ていないかもしれない。ゲームデザインは、実際にゲームとして実現されプレイされるまで適切な評価ができない可能性がある。そのため、プレイヤーが自分が 探索したデザイン評価できるように、デザインを素早くゲームとして実現できる必要がある。
(b) プレイヤー間の好みの衝突: プレイヤーAに適したデザインは、プレイヤーBには適していないかもしれない。そのため、好みの衝突を解消するようなゲームデザインを行う必要がある。
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