できる限り多くの人に作ったゲームをプレイしてもらい、そして満足してもらうのは、ゲーム開発者にとっての願いだと思う。そのための手段の一つは、ゲームのモードあるいはゲームのレベルをユーザが 明示的に 選択できるようにすること。今回の記事では、このこと(レベル設計機能)について、当たり前なことも踏まえつつ、少し考察・分析してみたい。誰かがすでにうまく分析済みかもしれないけど。
なぜ考察・分析する必要があるか。上に書いたように、レベルを選択できる機能があることで、より多くのユーザを満足させうるという利点がある。でもこの機能を実際に採用するのは容易でないんじゃないかと思う。二つの側面についての理解が必要だと思う。
ゲームデザインの側面:格闘ゲームでは、レベル(難易度)の設定というのは、直感的に分かると思う。たとえば、ハードモードでは敵が賢いなど。しかし、RPGではどうか。もちろん、敵のAIを強くするとかは考えられる。経験値が少ないとかも考えられる。しかし、ゲームデザインとしては、他にも色々考えられる。つまり、レベルの違いによってゲーム環境の何を変化させるのがベストなのか。
技術的な側面:レベル設定機能を、ソフトウェアの機能として実現するのは容易なのか。ゲームのレベル設定機能というのは、他の機能に色々影響を与えるような横断的な機能だと思う。通常、このような横断的な機能をいまく実装するのは難しい。つまり、ゲームデザインを、どうやってうまくソフトウェアとして設計して実現するのか。
まずは、ゲームデザインの側面から考えていこう。
僕が知っている限り、昔(スーパーマリオとかの時代)のゲームには、ゲームレベル(簡単、普通、難しいなど)を明示的に選択できるようなゲームは少なかったように思える。まずは実際にプレイしたことがある昔のゲームを思い出しながら考えてみる。
たとえば、アクションゲームでは、マリオでは、レベルの選択はできなかった。ドラクエ3やFF3のRPGもそんな選択はできなかった。一方で、スト2とかでは、(確か)選択できた。シューティング系は、ちょっとわからない。シミュレーション系もちょっとわからない。
どのジャンルで、いつの時代からレベル選択が明示的にできるようになったのかは調査不足でなんとも言えない。だけど、モダンな最近のゲームでは、選択できる場合が増えてきてるんじゃないかと思う。
最初の考察:恐らくジャンルによってゲームレベルの設定機能を採用する/しないの割合について違いがあるんじゃないかと思う。なぜジャンルによって違うがでるのかを考えるのは面白そう。たとえば、格闘ゲームでは、1992年発売のスト2では、設定機能は採用されていた。一方、RPGでは、1991年発売のFF4、92年のFF5とDQ5、94年のFF6、95年のDQ6では採用されていなかった。なぜか。
この理由は何か。
- デザイナーの好みのため。つまり、レベル設定機能は 技術的に 搭載できたけれど、必要ないと判断したため。
- ジャンルによっては、技術的な制約のため搭載できなかったため。たとえば容量不足やコーディングの難しさなど。
- 技術的に搭載できたし、デザイナーも搭載したかったけど、管理的な制約のために搭載できなかった。開発期間の制約や他に優先すべき機能があったなど。あるいは、レベルの調整が大変など。
- そもそも、ジャンルによっては、レベル設定機能は初めから選択肢として存在しなかったため。たとえるなら、ゲーム上の登場人物がレベルップするという機能を採用するかどうかは、RPGでは選択肢になるが、格闘ゲームではそもそも選択肢にすら入らない。同じように、当時のゲームデザイナーあるいは開発者にとっては、RPGにおけるレベル設定機能は、選択肢ではなかった。
次回に続く。
一つ目は、宮本氏のゲームデザインの方法に関わる発言(太字は僕による):
宮本茂: 私はヘイロー(のようなゲーム)を作ることもできます。それは私がデザインすることができないゲームというわけではなく、単純に、私がその選択肢を選ばなかったというだけです。私のゲームデザインについて一つ言えることは、ユーザーが望んでいるものを見つけて、それに合わせたゲームをデザインしようとしたことはこれまで一度もありません。私は常に、楽しく遊べる新しい体験をクリエイトすることを心がけています。ここから分かるのは、少なくとも、ゲームをデザインする上で二つのアプローチがあるということ:
- ユーザの望んでいるものからスタートしてゲームをデザインする
- (ユーザにとって?)楽しく遊べる新しい体験とは何か、という観点からデザインすること
二つ目は、(僕の)ちょっと解釈の仕方が間違っているかもしれないけれど。
関連しそうな資料。ゲームのデザインではないけれど、建築家やエンジニア、製品設計者のデザイン思考についてのPDF資料。「CREATIVE THINKING IN DESIGN(PDF)」
それらの設計者にインタビューすることで、彼らがデザインすることについて何といっているのかを調査している。
宮本氏のインタビューに戻って、次は、ゲームのテスト方法について宮本氏がどう考えているか(太字は僕による):
宮本茂: 制作費の高騰によって、もしこのような方法でゲームをデザインしないとしたら、ゲーム会社が大きな不安を抱えることを私は理解しています。でも、自分が作りたい作品を作るべきです!心からみんなが私と同じ方法でゲームを開発するようになることを望みます。私はゲームを誰かにプレイしてもらうとき、意見を聞いたり、アンケートを取ったりしません。ただ、ゲームをプレイする彼らの目や表情を観察するだけです。彼らは笑っていますか?あるいは苛立っていますか?これは全くもって科学的な方法ではありませんが、そのように私は自分のゲームをテストするのです。
この発言からは、少なくも、ゲームのテスト方法について3つがあると考えられる:
- ゲームプレイヤーから意見やアンケートを基にテストする
- ゲームプレイヤーの目や表情の観察を基にテストする
- 1と2を組み合わせてテストする。
宮本氏の発言からは、彼がそうやってテストしている詳細な理由を言ってくれていないので推測でしかないけど、次のことが考えられる。
- 1の方法は、2の方法よりも効果的でない。2の方法でテストすることで、1の方法を含む、それ以上のテストができる。
- 1の方法は、テストの方法として間違っている。つまり、1の方法では、ゲームをテストしたことにならない。意見やアンケートは、デザイナーに対し、誤った情報を与える。
- 1の方法と2の方法は、それぞれゲームについての異なる側面のテストを行える。つまり、組み合わせて使うことでより広い範囲でゲームのテストを行える。