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2024/11/22 07:00 |
ゲームデザインの理論:ゲームプレイヤーの合理性と合理的ゲームデザインプロセス
更新履歴
2009.06.17: この記事の内容を修正して「ゲームデザインの理論」のドキュメントに追加しました。今後は、こちらのドキュメントを更新していきます。
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この記事では以下を主張する。

  ・ゲームプレイヤーは、ゲームデザインを合理的に評価するため、ゲームデザインのプロセスは、合理的なゲームデザインを創るためのプロセスである必要がある。

この主張は次の論理に基づく。

  (1) ゲームプレイヤーは、ゲームデザインを合理的に評価する。
    (1.1)あるプレイヤーは、合理的でないデザインを不満があるとして評価する。

  (2)あるプレイヤーの不満を解消するには、合理的なゲームデザインが必要となる。

  (3)ゲームデザインのプロセスは、合理的なゲームデザインを創れるプロセスである必要がある。

項目(1)の妥当性は、私が行っているゲームレビューの分析結果に基づく。


ゲームデザインとは何か?


ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定を行うことだする。

  (1)ゲームのルールの側面: キャラクターのレベルは上がる。レベル制限は99。戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う、など。

  (1.1)ゲームバランスの側面: ある敵のHPは500といった、パラメータの設定など。

  (2)ゲームシステムの側面: セーブ数は、10件など。

  (2.1)ユーザインタフェースの側面: LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができるなど。

  (2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。

  (3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。

ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたことの集合であるとする。

詳細は「ゲームデザインの理論」のドキュメントを参照。


ゲームデザインに対するゲームプレイヤーの合理的評価


gooの国語辞典によれば
「合理的」とは次の意味を持つ。

  (1) 論理にかなっているさま。因習や迷信にとらわれないさま。

  (2) 目的に合っていて無駄のないさま。

ここでは、ゲームプレイヤーのゲームレビューを分析することで得られた観察から、ゲームプレイヤーはゲームデザインを合理的に評価することを示す。

NDSのRPGの一つである『セブンスドラゴン』のレビューでは、次のような不満があった。

   ・オートバトルの機能がない。

この不満は、この記事を書いている時点での全94件中7件あった。この不満は単なる機能不足を不満に思っているものもあるが、多くはプレイヤー個人の理由付けに基づいて不満となっている。以下にまとめる。

  (a) オートバトルの機能がない(1/7件)。

  (b) エンカウント率が高いため、バトルが多いのに、オートバトルの機能がない(3/7件)。
 
  (c) LとRボタンが使われておらず空いているのに、オートバトルの機能が割り当てられていない(2/7件)。

  (d) 過去のゲーム(ファミコン時代の『女神転生』と『世界樹の迷宮II』)では、オートバトルの機能があったのに、このゲームにはない(2/7件)。

項目(a)は、不満の理由が書かれていないため、合理的とは判断できない。

項目(b)は、オートバトル機能が何故必要となるのかの理由を挙げている。

項目(c)は、オートバトル機能の実現の容易性を挙げている。もし、LとRボタンが埋まっているなら、ゲームデザイナーはインタフェース上の新たな決定を行わなければならないが、空いているため、そうではない。

項目(d)は、オートバトル機能は新規性を伴うような実現の困難な機能ではないことを挙げていると推測できる。


もちろん、プレイヤーの不満には合理的との判断が難しいものも存在する。たとえば以下のような不満があった。

  ・職業選択式なのに転職できない。

この不満は、94件中1件あった。この不満には、以下の理由付けがされている。

  ・違う職業を使いたくなった場合、別キャラを1から育てなければいけない為、非常に手間がかかる。

しかし、この理由が合理的かどうかは以下のような疑問があるため判断が難しい。

  この理由が合理的であるとすると、職業選択式の場合、転職できることが必須となる。

  しかし、この不満は、94件中1件であり、多くのプレイヤーがこの不満の解消を望んでいるのかどうか分からない。


ここまでをまとめる。

  (A) プレイヤーの不満には、以下が存在する。

    (A1) 不満の理由付けがされているもの。「エンカウント率が高いため、バトルが多いのに、オートバトルの機能がない」

    (A2) 不満の理由付けがされていないもの。「オートバトルの機能がない」

  (B) 不満の理由付けがされたものには、以下が存在する。

    (B1) 合理的な理由付けがされているもの。「エンカウント率が高いため、バトルが多いのに、オートバトルの機能がない」

    (B2) 合理的でない、もしくは合理的と判断が難しいような理由付けがされているもの。「違う職業を使いたくなった場合、別キャラを1から育てなければいけない為、非常に手間がかかるのに、転職できない」

  (C) 不満の理由付けは、個々のプレイヤーにより異なる観点から行われる。「エンカウント率が高いため、バトルが多いのに、オートバトルの機能がない」「 LとRボタンが使われておらず空いているのに、オートバトルの機能が割り当てられていない」

合理的なゲームデザインを創るゲームデザインプロセス


上記で書いたことをまとめるなら、

  ・あるプレイヤーは、合理的でないゲームデザインを不満があるとして評価する。

ということである。プレイヤーを満足させることがゲームデザインの目標であるとすると、これは、以下を意味する。

  ・あるプレイヤーにとって合理的でないゲームデザインから発生する不満を解消するには、合理的なゲームデザインが必要である。

したがって、ゲームデザインのプロセスに対する以下の要件があると考えられる。

  ・ゲームデザインのプロセスは、少なくとも、部分的には合理的なゲームデザインを創るプロセスである必要がある。

ここで「部分的に」としたのは、ゲームデザインの全ての部分、つまり、全てのデシジョン(決めたこと)が合理的である必要があるかは不明のためである。

ゲームデザインのプロセスは、ゲームデザイナーが決定を行うプロセス、つまり、意思決定のプロセスであるため、上記の要件を言い換えるなら、以下を意味する。

  ・ゲームデザイナーは、合理的な意思決定を行わなければならない。

ここで注意が必要なのは、ゲームプレイヤーとゲームデザイナーは異なるゲームデザインを評価するということである。ゲームプレイヤーは、ゲームデザイナーが行った全ての決定を知ることはできない、もしくは困難である。したがって、

  ・ゲームプレイヤーにとっては、ある不満に対する合理的な理由付けであっても、ゲームデザイナーにとっては、合理的でない可能性がある。

つまり、たとえば、「オートバトル機能の有無」では、「オートバトル機能が存在しない」のは、ゲームデザイナーが行った合理的な理由付けによるかもしれない。

また、ゲームデザイナーが合理的な決定を常に行うことは現実には困難であるということも注意が必要である。つまり、ゲームデザイナーは、合理的である最適なゲームデザインを生み出すのは困難である。というのは、最適である決定を行うために必要となる情報、認知能力、時間などの制約がゲームデザイナーには存在するためである。一般に、意思決定者がこのような制約のもとでしか意思決定を行えないことは、限定合理性Bounded rationality)と呼ばれる。


ここまでをまとめると、ゲームプレイヤーにとってのゲームデザインの合理性の欠如から不満が発生する場合、以下がありえる。

  (1) ゲームプレイヤーにとっては合理的なゲームデザインであるが、ゲームデザイナーにとっては合理的でないゲームデザイン

  (2) ゲームプレイヤーにとっては合理的なゲームデザインであるが、ゲームデザイナーが合理的にできなかったゲームデザイン

項目(1)に関しては、以下が必要となる。
 
  (a)
ゲームプレイヤーを満足させることが目標である場合、ゲームデザイナーが妥協し、プレイヤーにとっての合理性を優先する。

項目(2)に関しては、以下が必要となる。

  (b) ゲームデザイナーが合理的な決定を行えるように支援する仕組み。たとえば、ある決定(「バトル機能がある」「エンカウント率は高めである」)を行った場合、次にどんな決定を行うのが合理的なのか(「オートバトルの機能がある」)を提示するようなシステム

まとめ


この記事では、以下を主張した。

  ・ゲームプレイヤーは、ゲームデザインを合理的に評価するため、ゲームデザインのプロセスは、合理的なゲームデザインを創るためのプロセスである必要がある。

ゲームデザインは、ゲームデザイナーによって行われる。しかし、

  ・ゲームデザイナーが合理的な決定を行うのは容易でないため、ゲームデザイナーの決定を支援するような仕組みが必要である。



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2009/06/14 10:53 | Comments(0) | TrackBack() | ゲームデザイン

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