この記事では、以下を主張する。
ゲームデザインのプロセスは、繰り返しのプロセスとして特徴付けられる。これは、ゲームデザイン上の決定(デシジョン)の変更が繰り返し必要になるということである。デシジョンの変更は、そのゲームをプレイするユーザの満足度に影響を与える。ゲームデザインのプロセスの目標の一つは、できる限り多くのユーザを満足させることであると考えられるため、デシジョンの変更によるユーザの満足度の変化の理解が重要になる。
この記事では、ゲームデザイン上のデシジョンの変更結果には、以下の二つがあることを述べる。
(1)あるユーザを満足させつつ、不満だった他のユーザも満足させるようなもの
(2)あるユーザを満足させずに、不満だった他のユーザを満足させるようなもの
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: キャラクターのレベルは上がる。レベル制限は99。戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: ある敵のHPは500といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: セーブ数は、10件など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができるなど。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたことの集合であるとする。
NDSの『女神異聞録デビルサバイバー』のレビューの79件(2009/5/29時点)を分析した結果、以下の不満は2件あった。
所持金が99999マッカまでしか持てない
たったの2件の不満であるが、この実例をもとに考察していく。
この不満を解消する一つの方法は、99999より十分大きな値を設定するようにデシジョンを変更することである。たとえば、二桁増やして9999999などにする。
ここで着目したいことは、このデシジョンの変更は、他の77人(件)のユーザを満足させつつ、不満だった2人も満足させるだろうということである。
しかし、一般的には、変更後のデシジョンが、元々満足だったユーザを満足させたままとは限らない。そのため、デシジョンの変更結果は、ユーザ満足の保持するかどうかの観点から分類できる。
(1)ユーザ満足を保持するデシジョン変更: あるデシジョンAからBの変更は、デシジョンAで満足していたユーザを満足させたまま、満足していなかった(一部の)ユーザを満足させる。
(2)ユーザ満足を保持しないデシジョン変更: あるデシジョンAからBの変更は、デシジョンAで満足していた(一部の)ユーザを不満足にし、満足していなかった(一部の)ユーザを満足させる。この場合、ユーザ間に好みの衝突が発生したといえる。
この記事では、ゲームデザイン上のデシジョンの変更結果には、二つあることを主張した。この二つの分類がどんな意味を持つか? 一つは、
(1)あるデシジョンの変更がどちらの種類に分類されるのかが十分に分析されず理解されていない
ということである。そのため、不十分なゲームデザインになりうる。
(a)ユーザ満足を保持するデシジョン変更であるのに、ユーザを不満足なままにしてしまう。
(b)ユーザ満足を保持しないデシジョン変更であるのに、元々満足であったユーザを不満足にしてしまう。
ある種のデシジョンは、一般的なデシジョンとして扱えると考えられる。たとえば、例としたマッカの最大値は、RPGのような所持金があるようなゲームでは、「所持金の最大値」に関するデシジョンとして一般化できる。このデシジョンは恐らくユーザ満足を保持するデシジョン変更として扱えるため、最大値はできる限り大きくしたほうがよい。
ただし、以下の考慮が必要である。
(A)あるデシジョンは他のデシジョンと依存関係を持つため、デシジョン間の関係を考慮して、デシジョンの構造としてユーザ満足の保持性を考える必要がある。たとえば、マッカの最大値が99999なのは、ユーザインタフェースを考慮してのことかもしれない。表示する桁数が増えるとユーザインタフェースに悪影響を与えるからかもしれない。
ゲームデザイン上のデシジョンの変更結果には、以下の二つがある。 (1)あるユーザを満足させつつ、不満だった他のユーザも満足させるようなもの (2)あるユーザを満足させずに、不満だった他のユーザを満足させるようなもの |
ゲームデザインのプロセスは、繰り返しのプロセスとして特徴付けられる。これは、ゲームデザイン上の決定(デシジョン)の変更が繰り返し必要になるということである。デシジョンの変更は、そのゲームをプレイするユーザの満足度に影響を与える。ゲームデザインのプロセスの目標の一つは、できる限り多くのユーザを満足させることであると考えられるため、デシジョンの変更によるユーザの満足度の変化の理解が重要になる。
この記事では、ゲームデザイン上のデシジョンの変更結果には、以下の二つがあることを述べる。
(1)あるユーザを満足させつつ、不満だった他のユーザも満足させるようなもの
(2)あるユーザを満足させずに、不満だった他のユーザを満足させるようなもの
ゲームデザインとは何か?
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: キャラクターのレベルは上がる。レベル制限は99。戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: ある敵のHPは500といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: セーブ数は、10件など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができるなど。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたことの集合であるとする。
ユーザ満足を保持するデシジョン変更と保持しないデシジョン変更
NDSの『女神異聞録デビルサバイバー』のレビューの79件(2009/5/29時点)を分析した結果、以下の不満は2件あった。
所持金が99999マッカまでしか持てない
たったの2件の不満であるが、この実例をもとに考察していく。
この不満を解消する一つの方法は、99999より十分大きな値を設定するようにデシジョンを変更することである。たとえば、二桁増やして9999999などにする。
ここで着目したいことは、このデシジョンの変更は、他の77人(件)のユーザを満足させつつ、不満だった2人も満足させるだろうということである。
しかし、一般的には、変更後のデシジョンが、元々満足だったユーザを満足させたままとは限らない。そのため、デシジョンの変更結果は、ユーザ満足の保持するかどうかの観点から分類できる。
(1)ユーザ満足を保持するデシジョン変更: あるデシジョンAからBの変更は、デシジョンAで満足していたユーザを満足させたまま、満足していなかった(一部の)ユーザを満足させる。
(2)ユーザ満足を保持しないデシジョン変更: あるデシジョンAからBの変更は、デシジョンAで満足していた(一部の)ユーザを不満足にし、満足していなかった(一部の)ユーザを満足させる。この場合、ユーザ間に好みの衝突が発生したといえる。
考察
この記事では、ゲームデザイン上のデシジョンの変更結果には、二つあることを主張した。この二つの分類がどんな意味を持つか? 一つは、
(1)あるデシジョンの変更がどちらの種類に分類されるのかが十分に分析されず理解されていない
ということである。そのため、不十分なゲームデザインになりうる。
(a)ユーザ満足を保持するデシジョン変更であるのに、ユーザを不満足なままにしてしまう。
(b)ユーザ満足を保持しないデシジョン変更であるのに、元々満足であったユーザを不満足にしてしまう。
ある種のデシジョンは、一般的なデシジョンとして扱えると考えられる。たとえば、例としたマッカの最大値は、RPGのような所持金があるようなゲームでは、「所持金の最大値」に関するデシジョンとして一般化できる。このデシジョンは恐らくユーザ満足を保持するデシジョン変更として扱えるため、最大値はできる限り大きくしたほうがよい。
ただし、以下の考慮が必要である。
(A)あるデシジョンは他のデシジョンと依存関係を持つため、デシジョン間の関係を考慮して、デシジョンの構造としてユーザ満足の保持性を考える必要がある。たとえば、マッカの最大値が99999なのは、ユーザインタフェースを考慮してのことかもしれない。表示する桁数が増えるとユーザインタフェースに悪影響を与えるからかもしれない。
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