2009/8/20: この記事の内容を修正して「ゲームデザインの理論」のドキュメントに「ゲームプレイ時におけるプレイヤーの好みの変化」として追加しました。今後は、こちらのドキュメントを更新していきます。
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この記事では、以下を主張する。
あるゲームに対するある ゲームプレイヤーの好みは、そのゲームのプレイを通じて、変化する
このことは、以下を意味する。
ゲームデザインのプロセスは、プレイヤー個人の好みの変化に対応できるデザインを生み出すプロセスである必要がある
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定(デシジョン)を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: キャラクターのレベルは上がる。レベル制限は99。戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: ある敵のHPは500といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: セーブ数は、10件など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができるなど。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたこと(デシジョン)の集合であるとする。
詳細は「ゲームデザインの理論」のドキュメントを参照。
PS2のRPGである『ペルソナ4』のレビューでは、以下の不満点があった。
中間くらいで戦闘ナビがいらないと思うようになった。分かってることを何度も言ってくるので、音楽を聴いていたほうがいい気がした。
この不満点は、全139件のレビューの内1件だけであったので、この不満に対処する優先順位は低いかもしれない。しかし、この不満の表現からは以下が分かる。
あるゲームに対する あるゲームプレイヤーの好みは、ゲームプレイを通じて、変化する
ゲームデザインの観点から、もっと一般的に言えば以下のように言える。
あるゲームプレイヤーに適したゲームデザインは、ゲームプレイヤーのプレイ経験を通じて変化する
下記の図は、プレイヤーのプレイ経験が変化することで、ゲームに対する満足度が「満足」の状態から「不満」に変化することを示している(ここでは簡単のためゲーム=ゲームデザインとしている)。
ここで重要なのは、
初めからゲームデザインが誤っていた
というわけでないということである。戦闘ナビの例でいえば、この機能は、このプレイヤーにとっては初めから不要に思われていたわけでなかったといえる。
下記の図は、このプレイヤーの視点から理想的な状況を表している。このプレイヤーにとっては、ナビが不要だとなったら、そうなることが望ましい。
ゲームデザイナーは、プレイヤーのこのような要求に対応する必要がある。しかしながら、このようなプレイヤーの経験の変化に対応するには、ゲームデザイン側であらかじめ対応できるようになっている必要がある。この例でいえば、「戦闘ナビはオン・オフできる」というデシジョンを行ったデザインである必要がある。
以上のことから、ゲームデザインのプロセスに対する以下の要件を設定できる。
(要件)ゲームデザインのプロセスは、プレイヤー個人の好みの変化に対応できるデザインを生み出すプロセスである必要がある
一つのアプローチは、例でも示したように、プレイヤー自身が自分の現状の好みに合わせてゲームを調整できる機能を導入することである。
この記事では、事例に基づき、以下を主張した。
あるゲームに対するある ゲームプレイヤーの好みは、そのゲームのプレイを通じて、変化する
この主張が適切であれば、ゲームデザインのプロセスは、以下の特徴を備えていなければならない。
ゲームデザインのプロセスは、プレイヤー個人の好みの変化に対応できるデザインを生み出すプロセスである必要がある
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この記事では、以下を主張する。
あるゲームに対するある ゲームプレイヤーの好みは、そのゲームのプレイを通じて、変化する
このことは、以下を意味する。
ゲームデザインのプロセスは、プレイヤー個人の好みの変化に対応できるデザインを生み出すプロセスである必要がある
ゲームデザインとは何か?
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定(デシジョン)を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: キャラクターのレベルは上がる。レベル制限は99。戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: ある敵のHPは500といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: セーブ数は、10件など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができるなど。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたこと(デシジョン)の集合であるとする。
詳細は「ゲームデザインの理論」のドキュメントを参照。
ゲームプレイ時におけるゲームプレイヤーの好みの変化
PS2のRPGである『ペルソナ4』のレビューでは、以下の不満点があった。
中間くらいで戦闘ナビがいらないと思うようになった。分かってることを何度も言ってくるので、音楽を聴いていたほうがいい気がした。
この不満点は、全139件のレビューの内1件だけであったので、この不満に対処する優先順位は低いかもしれない。しかし、この不満の表現からは以下が分かる。
あるゲームに対する あるゲームプレイヤーの好みは、ゲームプレイを通じて、変化する
ゲームデザインの観点から、もっと一般的に言えば以下のように言える。
あるゲームプレイヤーに適したゲームデザインは、ゲームプレイヤーのプレイ経験を通じて変化する
下記の図は、プレイヤーのプレイ経験が変化することで、ゲームに対する満足度が「満足」の状態から「不満」に変化することを示している(ここでは簡単のためゲーム=ゲームデザインとしている)。
ここで重要なのは、
初めからゲームデザインが誤っていた
というわけでないということである。戦闘ナビの例でいえば、この機能は、このプレイヤーにとっては初めから不要に思われていたわけでなかったといえる。
下記の図は、このプレイヤーの視点から理想的な状況を表している。このプレイヤーにとっては、ナビが不要だとなったら、そうなることが望ましい。
ゲームデザイナーは、プレイヤーのこのような要求に対応する必要がある。しかしながら、このようなプレイヤーの経験の変化に対応するには、ゲームデザイン側であらかじめ対応できるようになっている必要がある。この例でいえば、「戦闘ナビはオン・オフできる」というデシジョンを行ったデザインである必要がある。
以上のことから、ゲームデザインのプロセスに対する以下の要件を設定できる。
(要件)ゲームデザインのプロセスは、プレイヤー個人の好みの変化に対応できるデザインを生み出すプロセスである必要がある
一つのアプローチは、例でも示したように、プレイヤー自身が自分の現状の好みに合わせてゲームを調整できる機能を導入することである。
まとめ
この記事では、事例に基づき、以下を主張した。
あるゲームに対するある ゲームプレイヤーの好みは、そのゲームのプレイを通じて、変化する
この主張が適切であれば、ゲームデザインのプロセスは、以下の特徴を備えていなければならない。
ゲームデザインのプロセスは、プレイヤー個人の好みの変化に対応できるデザインを生み出すプロセスである必要がある
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ドラクエ9のレビュー分析更新しました。以下テンプレ。
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一年以上前から、mk2さん(たとえばndsmk2さん)に投稿されたゲームレビューを分析しています。分析の目的は、プレイヤーの不満から、ゲームデザインの原則を特定することです。成果は、以下のドキュメントにまとめてます(まとめようとしています)。
ゲームレビューから学ぶゲームデザインの原則
ndsmk2さんには、現時点で161件のレビューが投稿されています。
pdfでこのページからダウンロードできます(pdfへの直接リンクはこちら)。意見要望などあれば、ここにコメントしてくださっても、直接メールしてくださってもかまいません。
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一年以上前から、mk2さん(たとえばndsmk2さん)に投稿されたゲームレビューを分析しています。分析の目的は、プレイヤーの不満から、ゲームデザインの原則を特定することです。成果は、以下のドキュメントにまとめてます(まとめようとしています)。
ゲームレビューから学ぶゲームデザインの原則
ndsmk2さんには、現時点で161件のレビューが投稿されています。
pdfでこのページからダウンロードできます(pdfへの直接リンクはこちら)。意見要望などあれば、ここにコメントしてくださっても、直接メールしてくださってもかまいません。
更新履歴
2009/8/8: この記事の内容を大幅に修正して「ゲームデザインの理論」のドキュメントに「ゲームプレイヤーの尊重性」として追加しました。今後は、こちらのドキュメントを更新していきます。
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この記事では、以下を主張する。
ゲームプレイヤーは、ゲームデザインに対して完全に利己的に不満の解消を要求するわけではない。
ゲームプレイヤーはゲームプレイを通じて、自分に適さない点があるとき、不満を持つ。しかし、ある種のプレイヤーは、自分だけに適するような不満の解消をゲームデザインに対して要求するのではなく、他のプレイヤーの好みを考慮するような解消を受け入れる。
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定(デシジョン)を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: キャラクターのレベルは上がる。レベル制限は99。戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: ある敵のHPは500といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: セーブ数は、10件など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができるなど。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたこと(デシジョン)の集合であるとする。
詳細は「ゲームデザインの理論」のドキュメントを参照。
ndsmk2さんのところの『ドラクエ9』のレビューを分析していると、次のような不満があった。
メッセージスピードを変更できない
この不満は、136件のレビュー中8件あった。ここで興味深いのは、なぜ、
「メッセージスピードが遅い」あるいは「メッセージスピードが速い」というような、プレイヤー自身に適した不満の表現でないのか
ということである。実際、「メッセージスピードが遅い」という不満は2件あった。
この疑問に対して、以下の3つの解釈を考えた。
・(解釈1) 過去の体験からの予測: 今までのドラクエのシリーズ(全てかどうかは未検証)では、メッセージスピードを変更する機能は存在していた。しかし、今作では、存在していない。そのため、過去の体験のあるプレイヤーは「メッセージのスピードの度合いが自分に適していない」というレベルの不満はなく、「メッセージのスピードが適していなくてスピードを変更したいのに、その機能がなくなっている」というレベルでの不満の表現を行った。
・(解釈2) 実際はプレイヤー自身に適した不満の表現である: 実際に、メッセージスピードの変更が必要な理由がプレイヤーにあったのかもしれない。たとえば、メッセースピードは最初はプレイヤーに適していた。しかし、プレイヤーが慣れるにつれて、メッセージスピードがプレイヤーに適さなくなった。そのため、スピードの変更の必要性があった。
この記事で主張したいのは、3つ目の解釈である。
・(解釈3) プレイヤーは、完全に利己的に自身の不満の解消を要求するわけではない: 自分に適したメッセージスピードは他のプレイヤーには適していないかもしれない。しかし、メッセージスピードをプレイヤー毎にに適するように変更できれば、自分だけなく他のプレイヤーの不満も解消できる。
もちろん、レビューを書いたプレイヤーは、3つ目のようなことを思考して不満を表現したわけではないかもしれない。実際、著者自身もこの「メッセージスピードを変更できない」という不満を持ったが、3のような思考を行ったわけはなかった。著者自身は、どちらかというと1だったように思える。
しかしながら、3の解釈も適切である、というのは重要であるように思える。少なくとも、筆者自身は3の解釈に反論はなかった。
一般化して、考えてみよう。ここでは、「完全に利己的なプレイヤー」と、「利己的ではないプレイヤー」の二種類が存在するとする。
・完全に利己的なプレイヤー: 自分の好みに適した不満の表現を行うプレイヤー
・利己的ではないプレイヤー: 自分の好みだけでなく他人の好みにも適した不満の表現の解消を行うプレイヤー
まずは、以下の図に示すように、完全に利己的なプレイヤーAと完全に利己的なプレイヤーBがいる場合。また、デシジョン1で構成されるゲームデザイン1とデシジョン2で構成されるゲームデザイン2があり、AとBがこれらゲームデザインのゲームをプレイしたとする。
この図から分かるように、完全に利己的なプレイヤーが表現する不満のみを解消しようとした場合、プレイヤー間で好みの衝突があるため、どちらのプレイヤーも満足させることができない。
次に、プレイヤーAとBに加えて、利己的でないプレイヤーXがいるとする。このプレイヤーXは、ゲームデザイン1のゲームをプレイし、「メッセージスピードが遅いのに変更できない」という不満の表現を行うとする(ゲームデザイン2の場合でも同様の議論が可能)。
ここで、二つの不満の表現が出たため、ゲームデザイナーは、どちらかを選択することで、不満の解消を行うことができる。
・(選択肢1)完全に利己的なプレイヤーの不満を解消: これにより、プレイヤーAの不満が解消され、プレイヤーBは不満になり、プレイヤーXは、解釈2の理由で不満があったのでない限り、とりあえずは満足する。
・(選択肢2)利己的でないプレイヤーの不満を解消: プレイヤーA、B、Xの全てのプレイヤーの不満を解消することができる。
選択肢2の場合を以下の図に示している。ただし、「メッセージスピードは、プレイヤーA、B、Xに適する範囲で変更が可能」と仮定している。
ここで、プレイヤーの利己性の度合いは関係しないのではないか、と思われる方がいるかもしれない。つまり、あるデシジョン(例ではデシジョン1かデシジョン2)は、プレイヤー間で好みの衝突を引き起こすということから、衝突を解消するようなデシジョン(例ではデシジョン3)を行うだけではないのか、ということである。
プレイヤーの利己性を考慮するかどうかは、衝突を解消するようなデシジョンを行ってよいかどうかに関係する。つまり、
・衝突を解消するようなデシジョンを受け入れるプレイヤー
・衝突を解消するようなデシジョンを受け入れないプレイヤー
がいると考えられるためである。
衝突を解消するようなデシジョンは、プレイヤーに選択することを強いるということである。プレイヤー自身に、自身に適したデザインを選択する権利を与えるということである。問題は、プレイヤーによっては選択する行為自体に不満を持つかもしれない、ということである。
ここでは、「利己的でないプレイヤー」 という観点から、「衝突を解消するようなデシジョンを受け入れるプレイヤーがいる」ということを示したといえる。
この記事では、以下の主張を行った。
ゲームプレイヤーは、ゲームデザインに対して完全に利己的に不満の解消を要求するわけではない。
このことは、
プレイヤー間の好みの衝突を解消するようなデシジョンを受け入れるプレイヤーがいる
とも言える。
2009/8/8: この記事の内容を大幅に修正して「ゲームデザインの理論」のドキュメントに「ゲームプレイヤーの尊重性」として追加しました。今後は、こちらのドキュメントを更新していきます。
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この記事では、以下を主張する。
ゲームプレイヤーは、ゲームデザインに対して完全に利己的に不満の解消を要求するわけではない。
ゲームプレイヤーはゲームプレイを通じて、自分に適さない点があるとき、不満を持つ。しかし、ある種のプレイヤーは、自分だけに適するような不満の解消をゲームデザインに対して要求するのではなく、他のプレイヤーの好みを考慮するような解消を受け入れる。
ゲームデザインとは何か?
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定(デシジョン)を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: キャラクターのレベルは上がる。レベル制限は99。戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: ある敵のHPは500といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: セーブ数は、10件など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができるなど。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたこと(デシジョン)の集合であるとする。
詳細は「ゲームデザインの理論」のドキュメントを参照。
ゲームプレイヤーの利己性
ndsmk2さんのところの『ドラクエ9』のレビューを分析していると、次のような不満があった。
メッセージスピードを変更できない
この不満は、136件のレビュー中8件あった。ここで興味深いのは、なぜ、
「メッセージスピードが遅い」あるいは「メッセージスピードが速い」というような、プレイヤー自身に適した不満の表現でないのか
ということである。実際、「メッセージスピードが遅い」という不満は2件あった。
この疑問に対して、以下の3つの解釈を考えた。
・(解釈1) 過去の体験からの予測: 今までのドラクエのシリーズ(全てかどうかは未検証)では、メッセージスピードを変更する機能は存在していた。しかし、今作では、存在していない。そのため、過去の体験のあるプレイヤーは「メッセージのスピードの度合いが自分に適していない」というレベルの不満はなく、「メッセージのスピードが適していなくてスピードを変更したいのに、その機能がなくなっている」というレベルでの不満の表現を行った。
・(解釈2) 実際はプレイヤー自身に適した不満の表現である: 実際に、メッセージスピードの変更が必要な理由がプレイヤーにあったのかもしれない。たとえば、メッセースピードは最初はプレイヤーに適していた。しかし、プレイヤーが慣れるにつれて、メッセージスピードがプレイヤーに適さなくなった。そのため、スピードの変更の必要性があった。
この記事で主張したいのは、3つ目の解釈である。
・(解釈3) プレイヤーは、完全に利己的に自身の不満の解消を要求するわけではない: 自分に適したメッセージスピードは他のプレイヤーには適していないかもしれない。しかし、メッセージスピードをプレイヤー毎にに適するように変更できれば、自分だけなく他のプレイヤーの不満も解消できる。
もちろん、レビューを書いたプレイヤーは、3つ目のようなことを思考して不満を表現したわけではないかもしれない。実際、著者自身もこの「メッセージスピードを変更できない」という不満を持ったが、3のような思考を行ったわけはなかった。著者自身は、どちらかというと1だったように思える。
しかしながら、3の解釈も適切である、というのは重要であるように思える。少なくとも、筆者自身は3の解釈に反論はなかった。
ゲームデザインへのゲームプレイヤーの利己性の影響
一般化して、考えてみよう。ここでは、「完全に利己的なプレイヤー」と、「利己的ではないプレイヤー」の二種類が存在するとする。
・完全に利己的なプレイヤー: 自分の好みに適した不満の表現を行うプレイヤー
・利己的ではないプレイヤー: 自分の好みだけでなく他人の好みにも適した不満の表現の解消を行うプレイヤー
まずは、以下の図に示すように、完全に利己的なプレイヤーAと完全に利己的なプレイヤーBがいる場合。また、デシジョン1で構成されるゲームデザイン1とデシジョン2で構成されるゲームデザイン2があり、AとBがこれらゲームデザインのゲームをプレイしたとする。
この図から分かるように、完全に利己的なプレイヤーが表現する不満のみを解消しようとした場合、プレイヤー間で好みの衝突があるため、どちらのプレイヤーも満足させることができない。
次に、プレイヤーAとBに加えて、利己的でないプレイヤーXがいるとする。このプレイヤーXは、ゲームデザイン1のゲームをプレイし、「メッセージスピードが遅いのに変更できない」という不満の表現を行うとする(ゲームデザイン2の場合でも同様の議論が可能)。
ここで、二つの不満の表現が出たため、ゲームデザイナーは、どちらかを選択することで、不満の解消を行うことができる。
・(選択肢1)完全に利己的なプレイヤーの不満を解消: これにより、プレイヤーAの不満が解消され、プレイヤーBは不満になり、プレイヤーXは、解釈2の理由で不満があったのでない限り、とりあえずは満足する。
・(選択肢2)利己的でないプレイヤーの不満を解消: プレイヤーA、B、Xの全てのプレイヤーの不満を解消することができる。
選択肢2の場合を以下の図に示している。ただし、「メッセージスピードは、プレイヤーA、B、Xに適する範囲で変更が可能」と仮定している。
ここで、プレイヤーの利己性の度合いは関係しないのではないか、と思われる方がいるかもしれない。つまり、あるデシジョン(例ではデシジョン1かデシジョン2)は、プレイヤー間で好みの衝突を引き起こすということから、衝突を解消するようなデシジョン(例ではデシジョン3)を行うだけではないのか、ということである。
プレイヤーの利己性を考慮するかどうかは、衝突を解消するようなデシジョンを行ってよいかどうかに関係する。つまり、
・衝突を解消するようなデシジョンを受け入れるプレイヤー
・衝突を解消するようなデシジョンを受け入れないプレイヤー
がいると考えられるためである。
衝突を解消するようなデシジョンは、プレイヤーに選択することを強いるということである。プレイヤー自身に、自身に適したデザインを選択する権利を与えるということである。問題は、プレイヤーによっては選択する行為自体に不満を持つかもしれない、ということである。
ここでは、「利己的でないプレイヤー」 という観点から、「衝突を解消するようなデシジョンを受け入れるプレイヤーがいる」ということを示したといえる。
まとめ
この記事では、以下の主張を行った。
ゲームプレイヤーは、ゲームデザインに対して完全に利己的に不満の解消を要求するわけではない。
このことは、
プレイヤー間の好みの衝突を解消するようなデシジョンを受け入れるプレイヤーがいる
とも言える。
更新履歴
さらに更新はこちらの記事を見てください。
2009/8/1: 分析内容を更新しました。不満の件数順のページを新たに追加しました。
2009/7/26: 分析内容を更新しました。
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一年以上前から、mk2さん(たとえばndsmk2さん)に投稿されたゲームレビューを分析しています。分析の目的は、プレイヤーの不満から、ゲームデザインの原則を特定することです。成果は、以下のドキュメントにまとめてます(まとめようとしています)。
ゲームレビューから学ぶゲームデザインの原則
さて、『ドラクエ9』が発売されてから二週間ほど経ちました。ndsmk2さんには、現時点で104件のレビューが投稿されています。
で、『ドラクエ9』のレビューを一通り読み終わりました。詳細な分析はまだですが、どのような不満があって不満の件数はどれくらいなのかというのを少しまとめてみました。バージョン1です。
pdfでこのページからダウンロードできます(pdfへの直接リンクはこちら)。意見要望などあれば、ここにコメントしてくださっても、直接メールしてくださってもかまいません。
さらに更新はこちらの記事を見てください。
2009/8/1: 分析内容を更新しました。不満の件数順のページを新たに追加しました。
2009/7/26: 分析内容を更新しました。
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一年以上前から、mk2さん(たとえばndsmk2さん)に投稿されたゲームレビューを分析しています。分析の目的は、プレイヤーの不満から、ゲームデザインの原則を特定することです。成果は、以下のドキュメントにまとめてます(まとめようとしています)。
ゲームレビューから学ぶゲームデザインの原則
さて、『ドラクエ9』が発売されてから二週間ほど経ちました。ndsmk2さんには、現時点で104件のレビューが投稿されています。
で、『ドラクエ9』のレビューを一通り読み終わりました。詳細な分析はまだですが、どのような不満があって不満の件数はどれくらいなのかというのを少しまとめてみました。バージョン1です。
pdfでこのページからダウンロードできます(pdfへの直接リンクはこちら)。意見要望などあれば、ここにコメントしてくださっても、直接メールしてくださってもかまいません。
更新履歴
2009/7/24: この記事の内容を修正して「ゲームデザインの理論」のドキュメントに追加しました。今後は、こちらのドキュメントを更新していきます。
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この記事では、以下を主張する。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
このプレイヤーが自分に適したゲームデザインを探索するという見方は、 ゲームのデザインプロセスに以下の結果をもたらす。
あるプレイヤーに適したゲームは、段階的にデザインできる。
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定(デシジョン)を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: キャラクターのレベルは上がる。レベル制限は99。戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: ある敵のHPは500といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: セーブ数は、10件など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができるなど。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたこと(デシジョン)の集合であるとする。
詳細は「ゲームデザインの理論」のドキュメントを参照。
一年以上前から、ゲームレビューサイトに投稿されたレビューを読み、プレイヤーがどんな不満を持っているのかを分析している。発見の一つは、以下である。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて、不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
ここで不満とは、以下であるとする。
プレイヤーの不満とは、 プレイヤーが実際にプレイして感じたこととプレイヤーが期待することとの間の不一致である。
不満の表現は、抽象的なものから具体的なものまで様々である。たとえば、NDSのRPGである『セブンスドラゴン』のレビューでは、次のような不満の表現があった。
・抽象的な不満の表現: はっきりとは言えないが、なぜかストレスが溜まっていく(メニュー画面とかの操作性が原因?)
・具体的な不満の表現: キーアイテムは処分不可能でありアイテム欄を圧迫するのに、預り所がない。
実際にプレイして感じたこととは、そのプレイヤーにとってのそのゲームの質あるいは機能的な事実である。質とは、たとえば、「ストレスがたまる」に対応する。機能的な事実とは、たとえば、「預り所がない」に対応する。
プレイヤーが期待することとは、実際にプレイして感じたこととの中で、プレイヤーが受け入れたくないことを解消する質や機能のことである。たとえば、「ストレスがたまらない」や「預り所がある」などである。
この節では、具体的な不満の表現が行われるプロセスには、
プレイヤーが自身に適したゲームデザインを探索するプロセス
が含まれることを議論する。
具体的な不満の表現として、たとえば、『セブンスドラゴン』のレビューでは、次のようなものがあった。
(1) ダッシュは、序盤のクエストをクリアすることの報酬としてできるようになるが、最初からダッシュできたほうがいい。
(2) 受注したクエストの確認がメニュー画面でできない。
(3) フロワロは踏むとダメージを受ける仕様(毒沼)だが、毒沼だけでなく幾つか種類を増やしてもよかった。たとえば、雑魚敵が強くなるなど。
これら不満の表現は、以下の二つの要素が明示的・暗黙的に含まれると考えられる(上記の表)。
・プレイヤー自身に適さない実際のゲームデザイン
・プレイヤー自身に適したゲームデザイン
ここで注目したいのは、これら二つの要素間の関係である。この記事では、
プレイヤー自身に適さない実際のゲームデザインからプレイヤー自身に適したゲームデザインへの探索
として見なせると考える。
以下の図は、探索のプロセスは「プレイヤーによる決定の拒否」と「プレイヤーによる決定」により行われることを示している。
「探索」と呼ぶのは、迷路を探索することに似ている部分があるためである。たとえば、分かれ道がAとBの二つあり、Aを選択した(デザイナーによる決定に対応)とする。Aの道を進んでいくと、行き止まりである。そこでこの道を引き返す(プレイヤーによる決定の拒否)。次にBを選択する(プレイヤーによる決定)。
この記事では、以下を主張した。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
プレイヤーが自分に適したゲームデザインを探索するという見方は、 ゲームのデザインプロセスに以下の結果をもたらす。
あるプレイヤーに適したゲームは、段階的にデザインできる。
ただし、次の課題がある。
(a) プレイヤー自身の探索の失敗: プレイヤーが想像したデザインは、実際にはプレイヤーに適し ていないかもしれない。ゲームデザインは、実際にゲームとして実現されプレイされるまで適切な評価ができない可能性がある。そのため、プレイヤーが自分が 探索したデザイン評価できるように、デザインを素早くゲームとして実現できる必要がある。
(b) プレイヤー間の好みの衝突: プレイヤーAに適したデザインは、プレイヤーBには適していないかもしれない。そのため、好みの衝突を解消するようなゲームデザインを行う必要がある。
2009/7/24: この記事の内容を修正して「ゲームデザインの理論」のドキュメントに追加しました。今後は、こちらのドキュメントを更新していきます。
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この記事では、以下を主張する。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
このプレイヤーが自分に適したゲームデザインを探索するという見方は、 ゲームのデザインプロセスに以下の結果をもたらす。
あるプレイヤーに適したゲームは、段階的にデザインできる。
ゲームデザインとは何か?
ゲームデザインのプロセス(活動)とは、ここでは、次のような側面に対する様々な決定(デシジョン)を行うことだする。
(1)ゲームのルールの側面: キャラクターのレベルは上がる。レベル制限は99。戦闘はターン制であり、敵と見方が交互に行動を行う、など。
(1.1)ゲームバランスの側面: ある敵のHPは500といった、パラメータの設定など。
(2)ゲームシステムの側面: セーブ数は、10件など。
(2.1)ユーザインタフェースの側面: LボタンとRボタンでキャラクターの切り替えができるなど。
(2.2) システムの品質に関わる非機能要素の側面: たとえば、ロード時間に対する要求。3秒以内に戦闘画面を表示し、ユーザの入力を受け付けなければならない、など。
(3)ゲームの遊び方に関する側面: ゲーム中のBGMを自由に変更できるなど。
ゲームデザインとは、このプロセスの結果として決めたこと(デシジョン)の集合であるとする。
詳細は「ゲームデザインの理論」のドキュメントを参照。
ゲームプレイヤーのゲームデザインに対する不満
一年以上前から、ゲームレビューサイトに投稿されたレビューを読み、プレイヤーがどんな不満を持っているのかを分析している。発見の一つは、以下である。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて、不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
ここで不満とは、以下であるとする。
プレイヤーの不満とは、 プレイヤーが実際にプレイして感じたこととプレイヤーが期待することとの間の不一致である。
不満の表現は、抽象的なものから具体的なものまで様々である。たとえば、NDSのRPGである『セブンスドラゴン』のレビューでは、次のような不満の表現があった。
・抽象的な不満の表現: はっきりとは言えないが、なぜかストレスが溜まっていく(メニュー画面とかの操作性が原因?)
・具体的な不満の表現: キーアイテムは処分不可能でありアイテム欄を圧迫するのに、預り所がない。
実際にプレイして感じたこととは、そのプレイヤーにとってのそのゲームの質あるいは機能的な事実である。質とは、たとえば、「ストレスがたまる」に対応する。機能的な事実とは、たとえば、「預り所がない」に対応する。
プレイヤーが期待することとは、実際にプレイして感じたこととの中で、プレイヤーが受け入れたくないことを解消する質や機能のことである。たとえば、「ストレスがたまらない」や「預り所がある」などである。
ゲームプレイヤーのゲームデザインの探索
この節では、具体的な不満の表現が行われるプロセスには、
プレイヤーが自身に適したゲームデザインを探索するプロセス
が含まれることを議論する。
具体的な不満の表現として、たとえば、『セブンスドラゴン』のレビューでは、次のようなものがあった。
(1) ダッシュは、序盤のクエストをクリアすることの報酬としてできるようになるが、最初からダッシュできたほうがいい。
(2) 受注したクエストの確認がメニュー画面でできない。
(3) フロワロは踏むとダメージを受ける仕様(毒沼)だが、毒沼だけでなく幾つか種類を増やしてもよかった。たとえば、雑魚敵が強くなるなど。
これら不満の表現は、以下の二つの要素が明示的・暗黙的に含まれると考えられる(上記の表)。
・プレイヤー自身に適さない実際のゲームデザイン
・プレイヤー自身に適したゲームデザイン
ここで注目したいのは、これら二つの要素間の関係である。この記事では、
プレイヤー自身に適さない実際のゲームデザインからプレイヤー自身に適したゲームデザインへの探索
として見なせると考える。
以下の図は、探索のプロセスは「プレイヤーによる決定の拒否」と「プレイヤーによる決定」により行われることを示している。
「探索」と呼ぶのは、迷路を探索することに似ている部分があるためである。たとえば、分かれ道がAとBの二つあり、Aを選択した(デザイナーによる決定に対応)とする。Aの道を進んでいくと、行き止まりである。そこでこの道を引き返す(プレイヤーによる決定の拒否)。次にBを選択する(プレイヤーによる決定)。
まとめ:段階的なゲームデザインのプロセスと課題
この記事では、以下を主張した。
ゲームプレイヤーは、ゲームプレイを通じて不満があるとき、プレイヤー自身に適したゲームデザインを探索する。
プレイヤーが自分に適したゲームデザインを探索するという見方は、 ゲームのデザインプロセスに以下の結果をもたらす。
あるプレイヤーに適したゲームは、段階的にデザインできる。
ただし、次の課題がある。
(a) プレイヤー自身の探索の失敗: プレイヤーが想像したデザインは、実際にはプレイヤーに適し ていないかもしれない。ゲームデザインは、実際にゲームとして実現されプレイされるまで適切な評価ができない可能性がある。そのため、プレイヤーが自分が 探索したデザイン評価できるように、デザインを素早くゲームとして実現できる必要がある。
(b) プレイヤー間の好みの衝突: プレイヤーAに適したデザインは、プレイヤーBには適していないかもしれない。そのため、好みの衝突を解消するようなゲームデザインを行う必要がある。